交通事故の入通院慰謝料の計算方法

 入通院慰謝料とは,入院・通院の日数に応じて支払われる金銭のことで,一般的に慰謝料といわれているものの一つです。
 入通院慰謝料は,自賠責保険基準・任意保険会社基準・裁判基準といわれる3つの基準のいずれかを用いて算定されます。
 具体的な基準は,ページ最後5記載の表を参照頂ければと思いますが,まずは,大まかな計算方法と具体例をもとに,どれ程の違いがあるかを理解して頂ければと思います。

入通院慰謝料の算定基準について

⑴ 自賠責基準
 ①実通院日数×2
 or
 ②通院期間
 のいずれかのうち少ない日数×4200円という基準で計算されます。

 例えば,最初の通院から3か月で治療を終了し,その間,実際に30日通院した場合
 ①で計算すると,30日×2=60日
 ②で計算すると,3か月=90日
 ①<②となるので,少ない方の①を基準に計算されます。
 すると,60×4200円=25万2000円となり,25万2000円が入通院慰謝料とされる。

⑵ 任意保険会社基準
 保険会社によって様々ですが,ページ最後5記載のような表を使用し,その表をベースに一定の増減をするのが一般的です。
 任意保険会社基準で慰謝料を計算した場合,自賠責基準より高額になると思われている方もいらっしゃいますが,必ずしもそうとは限らず,事案によっては,自賠責基準を下回る場合もあります。
 ページ最後5記載の表を見て頂ければ分かると思いますが,自賠責基準で支払われる上限が基準となっており,実際には,通院日数・傷害の程度などに応じて一定の増減がなされ,自賠責基準を大幅に上回ることは通常考えられません。
 ですので,自賠責基準と同程度か,自賠責基準よりやや高額であると考えて良いと思います。

⑶ 裁判基準
 ①原則,通院期間
 ②通院期間が長期の場合,実通院日数×3.5(むち打ちの場合は,×3)で計算することもある
 を基準に,ページ最後5記載の赤い本の表等を用いて計算するのが一般的です。

 ページ最後5記載の表を見て貰えば分かると思いますが,任意保険会社基準と比較しても極めて高額であるのが分かると思います。
 では,実際の事例で,どれ程の差が出るのか具体例をもとに計算してみましょう。

通院慰謝料の具体例

⑴ 週2日・3ヶ月通院した場合(むち打ち以外の場合)

ア 自賠責基準の場合
 ① 24日(1ヶ月に8日通院×3ヶ月)×2=48日
 ② 90日(3ヶ月)
 →①の方が少ないので,①を基準に計算します。
 ➡48×4200円=20万1600円が入通院慰謝料となる。

イ 任意保険会社基準
 保険会社によって様々ですが,ここでは,ページ最後5記載の表をもとに計算してみます。
 通院期間が3か月ですので,37万8000円を基準に増減をすることになります。
 そこで,37万8000円を基準に増減額事由を考えてみます。

 まず,減額の事由として,通院実日数による減額が考えられます。
 すなわち,事例は,週2回の通院ですので,通院実日数が,月平均5~9の場合にあたります。
 従って,37万8000円を,1/2~2/3の範囲で,減額することになります。
 すると,18万9000円~25万2000円となります。

 次に,増額の事由として,傷害の程度による増額が考えられます。
 事例は3ヶ月の通院を想定していますので,重症であるとは考え難いことから,0%~20%の範囲で増額が見込めると言うことになります。
 ここでは,便宜上,中間の10%の増額で計算してみます。
 すると,20万7900円~27万7200円となります。

 実際は,これらの事情以外も考慮されることから,実際に保険会社が提示する額と全く同じであるとは考え難いですが,少なくとも自賠責基準と比較して大幅な増額が見込めないことはお分かり頂けると思います。

ウ 裁判基準
 ①長期の治療ではないので90日(3ヶ月)を基準に計算する
 ➡①を赤い本の表に当てはめると,入通院慰謝料は73万円となります。

エ まとめ
 自賠責基準と裁判基準とでは,約52万円の差があり,弁護士費用を出費しても入通院慰謝料の増額が見込めます。

 また,任意保険会社基準と比較しても,大幅な金額の増加が見込めることから,弁護士費用を出費しても入通院慰謝料の増額が見込めると言えます。

⑵ 週1日・6ヶ月通院した場合(むち打ち以外の場合)

ア 自賠責基準の場合
 ① 24日(1ヶ月に4日通院×6ヶ月)×2=48日
 ② 180日(6ヶ月)
 →①の方が少ないので,①を基準に計算します。
  ➡48×4200円=20万1600円が入通院慰謝料となる。

イ 任意保険会社基準
 この事案においても,ページ最後5記載の表をもとに計算してみます。
 通院期間が6か月ですので,64万2000円を基準に増減をすることになります。
 そこで,64万2000円を基準に増減額事由を考えてみます。

 まず,減額の事由として,通院実日数による減額が考えられます。
 すなわち,事例は,週1回の通院ですので,通院実日数が,月平均1~4の場合にあたります。
 従って,64万2000円を,1/3~1/2の範囲で,減額することになります。
 すると,21万4000円~42万8000円となります。

 次に,増額の事由として,傷害の程度による増額が考えられます。
 事例は週1回程度の通院を想定していますので,重症であるとは考え難いことから,0%~20%の範囲で増額が見込めると言うことになります。
 ここでは,便宜上,中間の10%の増額で計算してみます。
 すると,23万5400円~47万0800円となります。

 この金額は,あくまで便宜上計算したに過ぎないことから,実際に保険会社が提示する額と全く同じであるとは考え難いですが,少なくとも自賠責基準と比較して大幅な増額が見込めないことはお分かり頂けると思います。

ウ 裁判基準
 ① 長期の通院ではないので180日(6ヶ月)を基準に計算します。
 ①を赤い本の表に当てはめると,入通院慰謝料は116万円となる。

エ まとめ
 自賠責基準と裁判基準とでは,約95万円の差があり,弁護士費用を出費しても入通院慰謝料の増額が見込めます。
 また,任意保険会社基準と比較しても,金額の増加が見込めることから,弁護士費用を出費しても入通院慰謝料の増額が見込めると言えます。
 さらに,自賠責基準と裁判基準については,週2日・3ヶ月通院した場合と週1日・6ヶ月通院した場合の入通院慰謝料は同じ額になります。

⑶ 注意点
 以上の事例は,被害者自身に過失がないことを前提としています。
 被害者自身の過失が大きい場合には,裁判基準によっても増額がない場合もございます。
 また,裁判基準は,弁護士が示談交渉を行うときにのみ適用されるのが通常であることから,被害者自身が,示談交渉の際に裁判基準で慰謝料を請求しても保険会社は応じることはありません。

交通事故の通院で大切なこと

⑴ 算定方法を理解し,こまめに通院することが大切です。
 入通院慰謝料は通院日数に応じて支払われますので,治療期間が長期に及んでも,その間の通院日数が少なければ,入通院慰謝料は低額となります。
 算定方法を知らなければ,示談交渉の際に後悔することになりかねません。
 示談交渉の段階になってからでは,入通院の日数を変えることはできませんので,ご注意下さい。
 入通院慰謝料の算定方法を理解し,痛みが続く間は,こまめに通院しましょう。

⑵ 専門家の手を借りること
 通院がある程度の日数に及ぶ場合には,弁護士費用を支払っても,弁護士に交渉を依頼する方が,最終的に受け取る賠償額が大きくなります。
 また,煩わしい交渉等のストレスからも解放されます。
 弁護士や専門医など交通事故の専門家の力を借りましょう。

 大阪鶴見法律事務所は,交通事故の法律相談は初回無料です。
 交通事故の被害者を多く治療されている医師の紹介も行っております。
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算定表

⑴ 任意保険会社が使用する表の一例
入院 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月
通院 25.2 50.4 75.6 95.8 113.4 128.6 141.2 152.4 162.6 170.2
1月 12.6 37.8 63.0 85.6 104.7 120.9 134.9 147.4 157.6 167.6 173.9
2月 25.2 50.4 73.0 94.6 112.2 127.2 141.2 152.5 162.6 171.4 176.4
3月 37.8 60.4 82.0 102.0 118.5 133.5 146.3 157.6 166.4 173.9 178.9
4月 47.8 69.4 89.4 108.4 124.8 138.6 151.3 161.3 163.8 176.4 181.4
5月 56.8 76.8 95.8 114.6 129.9 143.6 155.1 163.8 171.4 178.9 183.9
6月 64.2 83.2 102.0 119.8 134.9 147.4 157.6 166.3 173.9 181.4 185.4
7月 70.6 89.4 107.2 124.3 136.7 149.9 160.1 168.8 176.4 183.9 188.9
8月 76.8 94.6 112.2 128.6 141.2 152.4 162.6 171.3 178.9 186.4 191.4
9月 82.0 99.6 116.0 131.1 143.7 154.9 165.1 173.8 181.4 188.9 193.9
10月 78.0 103.4 118.5 133.6 146.2 157.4 167.6 176.3 183.9 191.4 196.4

 上記の表をベースに以下のような増減がなされます。

ア 通院の日数による増減
 通院実日数が月平均1~4日の場合  → 基準表の1/3~1/2
 通院実日数が月平均5~9日の場合  → 基準表の1/2~2/3
 通院実日数が月平均10日以上の場合 → 基準表の全額

イ 傷害の態様による増減
 軽傷の場合 → 支払基準額表の全額~10%の増額
 通常の場合 → 支払基準額表の全額の10%~20%の増額
 重症の場合 → 支払基準額表の全額の25%~70%の増額

⑵ 赤い本の表

ア むち打ち以外の場合
入院 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月
通院 53 101 145 184 217 244 266 284 297 306
1月 28 77 122 162 199 228 252 274 291 303 311
2月 52 98 139 177 210 236 260 281 297 308 315
3月 73 115 154 188 218 244 267 287 302 312 319
4月 90 130 165 196 226 251 273 292 306 316 323
5月 105 141 173 204 233 257 278 296 310 320 325
6月 116 149 181 211 239 262 282 300 314 322 327
7月 124 157 188 217 244 266 286 304 316 324 329
8月 132 164 194 222 248 270 290 306 318 326 331
9月 139 170 199 226 252 274 292 308 320 328 333
10月 145 175 203 230 256 276 294 310 322 330 335

イ むち打ちの場合
入院 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月
通院 35 66 92 116 135 152 165 176 186 195
1月 19 52 83 106 128 145 160 171 182 190 199
2月 36 69 97 118 138 153 166 177 186 194 201
3月 53 83 109 128 146 159 172 181 190 196 202
4月 67 95 119 136 152 165 176 185 192 197 203
5月 79 105 127 142 158 169 180 187 193 198 204
6月 89 113 133 148 162 173 182 188 194 199 205
7月 97 119 139 152 166 175 183 189 195 200 206
8月 103 125 143 156 168 176 184 190 196 201 207
9月 109 129 147 158 169 177 185 191 197 202 208
10月 113 133 149 159 170 178 186 192 198 203 209