交通事故

自転車事故の慰謝料

2022.02.09

自転車事故の慰謝料と自動車事故の慰謝料は違うの?

自転車事故に遭った場合、慰謝料はいくらもらえるの?、自動車事故の場合と慰謝料の金額は違うの?
などの疑問を抱かれる方が少なくないと思います。

結論から言うと、
自転車事故においても、加害者に対して、慰謝料を請求することは可能です。
また、
自転車事故における慰謝料は自動車事故における場合と同一の基準で計算することが一般的です。

したがって、自転車事故に遭われた方は、慰謝料を受け取ることが出来る可能性が高いと考えられます。

もっとも、自転車事故については、自動車やバイクなどの車両が絡む自動車事故とは異なる側面があることから、最後までお読み頂き、適切に対処して頂ければと思います。

慰謝料には二つの種類がある

慰謝料は、自転車事故等によって、肉体的な痛みや精神的な苦痛を負ったことに対して支払われるものですが、慰謝料といっても、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料の二つの種類があります。
そこで、まず、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料の違いについてがどのようなものかについて説明致します。

自転車事故の入通院慰謝料

入通院慰謝料は、交通事故等によって入院や通院を余儀なくされれたことに対して支払われる慰謝料です。
自転車事故においても、怪我をして入通院を余儀なくされれることが少なくありません。
入通院慰謝料は、入院や通院を余儀なくされたことに対して支払われるものであることから、相手方が、自動車であろうが自転車であろうが、入院や通院を余儀なくされた場合には、入通院慰謝料を請求できるのです。
また、入通院慰謝料は、怪我の程度や入通院の期間を基準に計算することが一般的であることから、怪我の程度や入通院の期間が同一であれば、自動車であろうが自転車であろうが入通院慰謝料の金額は同額となります。

入通院慰謝料の計算方法について

入通院慰謝料の計算方法は、赤い本に記載された表に基づき計算することが一般的です。
横軸が入院期間、縦軸が通院期間ですので、例えば、入院1カ月・通院6カ月の場合、別表1の基準だと149万円が入通院慰謝料の金額ということになります。
なお、別表1が骨折の他覚的な所見がある場合、別表2がむち打ち等の自覚症状のみによる場合の基準です。

【別表1】

  入院 1月 2 3 4 5 6 7 8
通院  53 101 145 184 217 244 266 284
1 28 77 122 162 199 228 252 274 291
2 52 98 139 177 210 236 260 281 297
3  73 115 154 188 218 244 267 287 302
4 90 130 165 196 226 251 273 292 306
5 105 141 173 204 233 257 278 296 310
6 116 149 181 211 239 262 282 300 314
7 124 157 188 217 244 266 286 304 316
8 132 164 194 222 248 270 290 306 318
9 139 170 199 226 252 274 292 308 320
10 145 175 203 230 256 276 294 310 322
11 150 179 207 234 258 278 296 312 324
12 154 183 211 236 260 280 298 314 326

 

 

【別表2】

   入院 1月 2 3 4 5 6 7 8
通院  35 66 92 116 135 152 165 176
1 19 52 83 106 128 145 160 171 182
2 36 69 97 118 138 153 166 177 186
3 53 83 109 128 146 159 172 181 190
4 67 95 119 136 152 165 176 185 192
5 79 105 127 142 158 169 180 187 193
6 89 113 133 148 162 173 182 188 194
7 97 119 139 152 166 175 183 189 195
8 103 125 143 156 168 176 184 190 196
9 109 129 147 158 169 177 185 191 197
10 113 133 149 159 170 178 186 192 198
11 117 135 150 160 171 179 187 193 199
12 119 136 151 161 172 180 188 194 200

自転車事故の後遺障害慰謝料

交通事故の治療期間は症状固定日時(症状がそれ以上改善しない状態に達した時)までに制限されることが一般的です。
なお、症状固定後も自己負担で通院すること自体は問題なく、症状固定後の治療費や慰謝料などが損害賠償の対象にならないというだけのことです。

交通事故の治療期間が症状固定時にまでに制限されることから、症状固定時において、痛みが残存していたり、腕が曲がらないなどの症状が残存しており、それ以上症状が改善しないことも少なくなくありません。
その場合には、症状固定日以降に発生する損害についても賠償を受けなければ十分な賠償を受けたとはいえないことから、残存した症状(後遺症)の程度に応じた賠償を受けることができます。

症状固定時において残存する症状が後遺障害に該当する場合に支払われる慰謝料が後遺障害慰謝料であり、後遺障害慰謝料の金額は、以下とおり、1級から14級に分類される後遺障害の程度に応じて計算することが一般的です。

 

 

第1級 第2級 第3級 第4級 第5級 第6級 第7級
2800万円 2370万円 1990万円 1670万円 1400万円 1180万円 1000万円
第8級 第9級 第10級 第11級 第12級 第13級 第14級
830万円 690万円 550万円 420万円 290万円 180万円 110万円

後遺障害の等級は誰が判断するの?

症状固定時に何らかの症状が残存している場合、その症状が、後遺障害に該当するのか否か、後遺障害の等級が何級に該当するのかは誰が判断するのでしょうか?
 

自動車が関係する交通事故の場合は、自賠責保険の適用があることから、自賠責保険が、後遺障害に該当するのか否か、後遺障害の等級が何級に該当するかを判断することが一般的です。
 

そのため、自動車事故の被害者は、医師に、後遺障害診断書を作成して貰い、後遺障害診断書を自賠責保険に提出すれば、自賠責保険が後遺障害の有無・等級を判断を行います。
 

自賠責保険が行う後遺障害の等級判断は、基本的に加害者側の保険会社も尊重することから、自動車事故の被害者が、自賠責保険の後遺障害の等級判断を前提に、加害者側の保険会社に後遺障害慰謝料を請求すれば、相手方保険会社もそれに応じることが一般的です。
 

ところが、自転車事故の場合には、自賠責保険の適用がないことから、自賠責保険の等級判断を利用することはできません。

そのため、自転車事故の被害者は、自分に残存した症状が後遺障害の何級に該当するかを主張して、後遺障害慰謝料を請求せざるを得ないのです。
 

しかしながら、賠償をする側からすれば、被害者が後遺障害が残ったと主張しただけで、上記のような高額な後遺障害慰謝料を支払うことは通常考え難く、交渉の窓口に加害者本人がなっている場合には、後遺障害の有無・等級自体が争いになることは少なくありません。
 

後遺障害の有無・等級が当事者間で争いになった場合には、最終的には訴訟を提起し、裁判官に後遺障害の有無・等級と判断して貰わざるを得ないことも少なくありません。
その場合には、自転車事故の被害者は、自分に後遺障害が残存していることに加えて、その等級が何級であるかを証明しなければなりません。
 

しかしながら、医学的にも法律的にも素人の被害者が後遺障害の有無・等級を証明することは不可能に近いといっても過言ではありません。
 

弁護士が自転車事故を敬遠する理由の一つに、弁護士にとっても、自賠責保険の判断なしに後遺障害の有無・等級を証明することが非常に難しいからという点が挙げられるぐらいなのです。
 

自転車事故で後遺障害が残存する可能性があるお怪我をされた方は、のちのち自らが後遺障害の有無・等級を証明しないといけない事態に陥る可能性があることを十分に認識して対応することが必要です。

自転車事故の慰謝料の具体例

自転車事故においても自動車事故の場合と同額の慰謝料を請求することが出来ます。
 

例えば、自転車事故で自覚症状のみの怪我をして、6カ月間通院し、14級の後遺障害が残存した場合の慰謝料は、通院慰謝料が89万円、後遺障害慰謝料110万円の合計199万円ということになります。
 

ちなみに、後遺障害14級は、むち打ちによる首の痛みや腰の痛みでも認定される得る後遺障害ですので、転倒を伴うような自転車事故の場合には、後遺障害が残存する可能性があると考えて対応することをお勧めします。

なお、後遺障害が残存した場合には、後遺障害慰謝料の他に、逸失利益(後遺障害が残存したことによる将来の減収分)を請求することが一般的ですが、逸失利益については、計算に含めておりません。

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