交通事故

交通事故で意識不明になり回復

2018.03.19

交通事故で意識不明の後に回復した場合の注意点

交通事故で頭を打ち、意識不明の状態が続いたが、その後、意識を回復し元気になったということは良くあることです。

しかし、一見完全に回復したように見えても実際は脳に損傷を受けていることがあります。

そこで、交通事故で意識不明に陥ったのち奇跡的に回復した場合、その後どのように対応して行けば良いのかについて説明していきます。

脳外科での治療だけでは不十分

交通事故で頭部外傷を負った場合、脳外科で治療を受けるのが一般的です。

脳外科においては、専ら脳からの出血を止める目的の治療が実施されます。

したがって、脳からの出血が止まり、その後の出血の可能性が低くなった場合、脳外科の医師から、これ以上治療する必要ないと言われることが少なくありません。

確かに、出血が止まった以上、脳外科でそれ以上の治療を行う必要はありません。

しかしながら、ここで注意すべきは、脳外科での治療の必要がない=元の状態に戻ったではないということです。

なぜなら、一度損傷した脳は、再生することはなく、損傷した脳が担っていた何らかの機能が失われている可能性が非常に高いからです。

このような頭部外傷による脳損傷後に生じる障害を、高次脳機能障害といいます。

例えば、言語を掌っていた部分を損傷した場合には、発言が困難になるなど何らかの障害が残存している可能性が非常に高いのです。

この点は、皮膚を切って出血した場合に、出血が止まり、かさぶたができ、かさぶたが取れれば元通りなるのと全く異なっていますので、注意が必要です。

そこで、本来、出血の可能性がなくなった後、脳の損傷により、どのような機能が失われたかを検査し、今後、どのような生活を送るべきかを考える必要があるのです。

ところが、このような検査は、一般的に精神科において実施されるのですが、脳外科の医師は、出血を止め、命を取り留めることを重視する傾向にあり、残存した機能障害について無関心なことが多いことから、精神科を受診するよう勧めることは稀で、その結果、十分な検査が実施されることなく全ての治療が終了することが少なくないのです。

脳外科の医師が言う、治療の必要はない=完治ではないということを肝に銘じて適切に対応して下さい。

高次脳機能障害の見逃しについて

交通事故で頭部を打撲し意識を失った場合、高次脳機能障害の可能性があります。
 
高次脳機能障害とは、簡単に説明すると、大脳が損傷を受けたことによって、認知障害、行動障害、人格変化が起こることを言います。
 
重度の高次脳機能障害の場合には、明らかな認知障害、行動障害、人格変化が生じることが多いことから、一見して高次脳機能障害であることが分かると思います。
 
しかし、軽度の高次脳機能障害の場合には、なんとなく物覚えが悪くなった、少し性格が変わったなど、現れる変化が小さいことから見逃されることが往々にしてあります。

また、交通事故に遭った後、意識が回復するまでの間治療にあたる医師は通常脳外科の医師ですが、脳外科の医師が、必ずしも高次脳機能障害の専門であるとは限らないことが高次脳機能障害が見逃される大きな原因であると思われます。

後遺障害などと大げさだと思われる方も少なくないかもしれませんが、高次脳機能障害で9級若しくは7級の認定を受けられた方の大半は、日常会話は問題なく出来るなど障害がない方との明らかな違いがないように思います。

当事務所に相談に来られ、その後、高次脳機能障害に関する後遺障害(9級及び7級)が認定された方の大半は、当事務所に来て、専門医の診察を受けていなければ、高次脳機能障害と診断されることもなかったと思われるますので、くれぐれも注意が必要です。

高次脳機能障害の可能性がある人

交通事故で頭部に強い衝撃を受け、昏睡状態若しくは半昏睡状態が6時間以上継続した場合は、高次脳機能障害になる可能性が極めて高いと言えます。

また、昏睡状態や半昏睡状態の時間が短時間の場合でも、脳挫傷・脳出血と診断された場合には脳が損傷を受けている可能性が高いので、周りの人が、事故以前と何か変化はないか、事故以前は出来ていたことが出来なくなっていないか、性格が荒っぽくなっていないかなどを慎重に観察してあげる必要があります。

高次脳機能障害の後遺障害等級について

3級3号

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
a. 生命維持に必要な行動はできるが、労務に服すことができない
b. 記憶や注意力等に著しい障害があって、一般就労が全くできないか、困難である

5級2号

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
a. 単純繰返し作業等に限定すれば一般就労可能だが、特に軽易な労務しかできない
b. 一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には職場の理解と援助を欠かすことができない

7級4号

神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
a. 特に軽易な労務等に限定すれば一般就労可能だが、軽易な労務しかできない
b. 一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことができない

9級10号

神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
a. 通常の労務はできるが、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限される
b. 一般就労を維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業持続力などに問題がある

高次脳機能障害の程度に応じて、後遺障害の等級が認定されますが、高次脳機能障害で後遺障害の等級が認定される場合、一番低い等級でも9級です。

したがって、仮に高次脳機能障害を見逃してしまった場合、本来受けることが出来る数千万円の賠償(9級の後遺障害慰謝料は赤い本の基準で690万円であり、それに遺失利益を加えると数千万になることは往々にしてあります。)を受けることが出来なくなります。

そのうえ、ご本人自身も後遺障害が残存していることに気付かず、他人からも、能力が低い人だ、変わった人だなどと思われながら、その後の人生を送って行くことになるのです。

高次脳機能障害が疑われる場合の対処方法

高次脳機能障害が疑われる場合、どのように対処すべきでしょうか。

脳神経は、一度損傷すると元に戻ることはないとされていますので、交通事故後早急に対応しなければ後遺障害の等級認定がなされないという種類の障害ではありません。

したがって、焦る必要はありません。

もっとも、専門医による診察及び検査を受けなければ高次脳機能障害であるか否かは分かりませんので、少なくとも症状固定の時期までに診察及び検査を受ける必要があります。

検査は、様々なテストを行い、いかなる部分に障害が生じるかを絞り込んで行きますので、長期間の検査が必要になります(入院検査だと1週間程度の入院で済みますが…)。

したがって、ご自身の生活状況を考えて、診察及び検査の計画をしておくことが大切です。

ただし、脳外科の医師ですら、高次脳機能障害についての十分な知識を有していないことがありますので、医師に相談したところ、「大丈夫だ」「そんな検査受ける必要ない」などと言われることも少なくありません。

しかしながら、交通事故で頭部を強打し、脳から出血が生じた場合や一定の時間意識を喪失した場合には、高次脳機能障害の可能性がありますので、検査を行っておいて損をすることはないと思います。

高次脳機能障害で注意すべきこと

脳外科の医師は、高次脳機能障害の専門医でないことの方が多いことから、脳外科の医師が、必ずしも高次脳機能障害の対応した診察・検査・後遺障害診断書の作成が出来るとは限りません。

したがって、高次脳機能障害が疑われる場合には、必ず高次脳機能障害を専門に扱っている医師の診察及び検査を受けて下さい。

高次脳機能障害を疑う一つの基準は、交通事故で頭部を強打し、「脳に出血が生じたか否か」、「一定の時間意識を喪失したか否か」です。

脳外科の医師が協力してくれない場合に、自分で検査を行ってくれる病院を探して、受診することなど不可能に近いと思いますので、医師と提携している弁護士に相談して下さい。

大阪鶴見法律事務所の高次脳機能障害への対応

1.高次脳機能障害の可能性がある交通事故の被害者の方については、診断書と画像をもとに、弁護士が聞き取りを行います。

2.MRI画像がない場合(CT画像しかない場合も同様)や画像が不鮮明な場合には、協力医のもとで3テスラMRIで撮影を行い、脳の損傷の有無を確認します。

3.脳に損傷が認められる場合、弁護士が付き添い、国立大学病院で高次脳機能障害を研究している医師のもとで診察を受けて頂きます。

4.高次脳機能障害の疑いがある場合には、大学病院で、神経心理学的検査を受けて頂きます。

5.神経心理学的検査の結果、高次脳機能障害であると診断された場合、医師に後遺障害診断書を作成して頂き、後遺障害の等級申請を行います。

弁護士が検査を手配し、診察にも立ち会えるのは、医師との太いパイプがあるからこそです。

大阪、京都、神戸、滋賀、奈良、和歌山など近畿周辺で高次脳機能障害に詳しい弁護士をお探しの方は大阪鶴見法律事務所ご相談ください。

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